UNEP(UnitedNationsEnvironmentProgramme:国連環境計画)は、建築・建設部門におけるエネルギーの消費は世界全体の25〜40%、また二酸化炭素(CO2)排出は30〜40%に相当すると算定するとともに、2006年にSBCI(SustainableBuilding&Constructionlnitiative:持続可能な建築物・建設業イニシアティブ)を設立し、持続可能な建築を全世界で推進する礎を築いた。
さらに2007年よりBuildingsandClimateChange:Status,ChallengesandOpportunitiesを公表し、全世界に向けて建物の省エネ対策の事例分類、エネルギー効率モデルの概念整理、省エネ推進策の事例紹介を開始している。
不動産セクターの温暖化への施策は、まさに加速がついているといえよう。
本章では、われわれが日常の生活を営んでいる住宅やビルといった建物を中心に不動産に関連するビジネスが今後どのように変革していくのかについて論じていく。
2007年6月のハイリゲンダムサミットにおいては、サミット首脳宣言「世界経済における成長と責任」において、「持続可能な建築物」についての言及がなされ、G8は、「持続可能な建築物ネットワーク」を設立し、そのネットワークへの新興国の参加を呼びかけ、さらには、低炭素・ゼロ炭素の建築物の開発・展開への配慮、再生可能エネルギーの利用とエネルギー効率の向上推進、建築物や設備に対するエネルギー基準やエネルギー・パフォーマンス認証等の促進手段を活用していくことで合意している。
わが国においても建物における温暖化に、より積極的に取り組むべきだという要請は日に日に高まりを見せている。
これは、単に上述の国際機関での急速な動きに呼応しているからだけではない。
2007年に中央環境審議会・産業構造審議会がとりまとめた「京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する中間報告」であるが、それによると、オフイスビル、事務所、商店、学校、病院、理容業、その他サービス業施設などの業務部門によるCO2排出量の2005年度実績は1990年対比45.1%増加、また家庭部門では37.0%の増加という結果になっている。
すなわち、最もCO2排出量のウエイトが高い工場などの産業部門では減少が図られているのに対し、運輸部門と並んでオフイスビルなどが大きな割合を占める業務部門と、マンション、アパート、戸建住宅等の家庭部門の排出量は、いまなお増加傾向に歯止めがかからない状況なのである。
これは、表面的な理由として、業務部門においては、ビルの延べ床面積の増加、ITシステムの普及に伴うビルのインテリジェント化や通年冷房の拡大によるビルの延べ床面積当たりのエネルギー原単位の増加、また、家庭部門においては、核家族化による世帯数の増加や住宅・家電機器の種類や導入台数の増加など、ライフスタイルの変化といったことが挙げられている。
だが、それだけではない。
わが国では、快適な生活を送るための利便性を制約する策を講じることに跨踏し、製造部門の環境技術の向上で温暖化対策は十分であるという考えがその根底にあったものと推測される。
このようなCO2排出量が増加の一途を辿っている状況を受けて、政府も重い腰を上げ、先のハイリケンダムサミットにおいての温暖化対策における戦略として「21世紀環境立国戦略」を公表のうえ、「省エネ型の住宅・建築物の普及促進」について言及し、「2030年までにさらに少なくとも30%以上のエネルギー消費効率を改善する」という具体的な数値目標を設定した。
さらにそのコミットをより明確化するために、2007年12月の最終とりまとめに向けて検討が進められている「京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する中間報告(素案)」においても、「6%削減目標のためには、全部門で排出削減のための一層の取組みが必要となることはいうまでもないが、とくに排出量の伸びが著しい業務部門・家庭部門の対策について、抜本的に強化することが必要である」と、とりわけ業務部門・家庭部門での排出削減の取組みに注力することが改めて強調されている。
このように、業務部門・家庭部門と密接に関係のある不動産セクターにおいて実効ある対策を講じてCO2排出量の削減を実現することが、国際的な公約である京都議定書目標達成の成否のカギを握っているといっても過言ではない。
このように、建物における温暖化への取組みが世界的に注目を集めている領域であるにもかかわらず、環境問題への意識が急速に高まっているといわれている消費者においては、住宅においては環境対策が注目を受けていないのが実情である。
すでに住宅を購入した消費者と今後購入を考えている消費者に、「購入の際に何を重視するか」と質問したところ、「耐震性」「遮音性」「耐久性」「防犯性」「日照」といった項目を回答した割合が高く、省エネ効果が期待できる「断熱性」の項目を回答した割合はそれらに比べて、約30〜50ポイントも低いことがわかる。
これらは限られた予算のなかでの住宅建設資金では、コストがかかる割にその効果がわかりづらい環境面に配慮した機能は、消費者に軽視される傾向にあることを示していよう。
そもそも消費者は、住宅における環境面に配慮した機能を十分に認識していない可能性すらあり得る。
2007年4月に発表された経済産業省の「ハウス構想推進に関する検討報告書」では、「省エネ基準や住宅性能表示制度を知らない」という消費者が全体の80%にも達するという結果が報告されている。
以上の結果から、社会的には要請が高まっているが、認識すらされていない住宅の環境面に配慮した機能が消費者に定着するには相当の時間を要するといわざるを得ない。
以上のとおり、わが国が置かれている状況を考えれば、不動産セクターでは、今後、住宅やビル等の建物における温暖化対策を進めるために、いかにインセンティブづけを行うか、に関心が高まってくるであろう。
国際的な要請が高まっているなか、国際的な公約である京都議定書目標達成の成否のカギを握っているわが国の建物における温暖化対策は、まさに時間との勝負である。
いかに短期間で消費者の建物に環境配慮の意識を高めるかがポイントになろう。
それには、温暖化対策を進めるインセンティブとなるようないくつかの政策が考えられ、行政の果たす役割は大きい。
建物の温暖化対策を推進していくためのインセンティブとなる政策として、規制・基準の強化、優遇税制や低金利融資、補助金等の経済的インセンティブの導入、エコラベルや省エネ性能認定制度による市場メカニズムの活用、という3点が考えられる。
以下ではそれらについて、現状と動向を整理する。
京都議定書の約束期間を目前にして、現在、規制・基準の強化や新たな導入に関する検討が活発に行われている。
建物の温暖化対策に関連する主な規制・基準である。
まず、建物の省エネ対策について規定する法律として、「省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」がある。
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